プレイバック・シアターPlayback Theaterとは

プレイバック・シアター研究所
羽地朝和

 プレイバック・シアターはJ・フォックス(Jonathan Fox)が1970年代に「コミュニティーのなかで、人と人のつながりを育む」という独自のアイディアをもとに創りだした即興でおこなう劇を中心にしたワークショップです。現在ではより創造的な表現や手法を加えながら各国で実践され、様々な領域で発展しています。日本ではレクリエーションや楽しいくつろぎの場としてまたグループ・カウンセリング、グループ・セラピー、学校での授業など様々な領域で活用されています。
  プレイバック・シアターは個人の問題の原因を探り、それを取り除いて解決するというアプローチをせず、その人のそのままを受け止め、本人自らが新たな可能性や創造性を発揮してみるということを楽しく行う場です。安心できるグループの中で無理をせずに自分自身を語ったり、表現したり、メンバーを支えたり、メンバーから支えられることを通して、自分自身の新たな可能性や関係性を発見するワークショップです。


プレイバック・シアターの展開
  誰かが自分のストーリー(自分自身の出来事)を語ります。心に強く残っている場面や長い間とらわれている出来事、なにげない日常生活の中のひとこまなど、いろいろなことが話されます。「語られたストーリー」は他の人が役者(アクター)となり、即興の劇で表現します。表現されたストーリーはその場の皆に分かち合われ、そしてまた語った本人に戻されます。
  実際には、この即興劇に到るまでのグループの一体感をつくる為のエクササイズや、参加者がアクターとして自由に表現する為のウォーミングアップや即興劇の後の分かち合いを含めた全体をプレイバック・シアターとして展開していきます。
活用されている領域
  他の手法とくらべると、多種多様な領域で活用されているのがPTの特徴のひとつでしょう。現在プレイバック・シアターを行っている領域を大きく分けると次の5つの領域があります。
◆治療・カウンセリング精神科クリニックでのセラピー、グループ・カウンセリング
◆学校教育 /産業界/芸術分野   舞台芸術、エンターテイメント
ほっとできる場、居場所として(お互いの分かち合い)


得られること
  実施する場の状況やどのような人々が集まってきたか等によって、進め方にはいろいろなバリエーションがありますが、プレイバック・シアターの根本にある「わかちあいの場」というところはどのような場合でも変わりはありません。安全な「わかちあいの場」で語り手は自分のストーリーを語り、客観的に見るとともに、その場にいる全員に自分の人生の1ページを受け入れてもらうことを体験します。ただそれだけなのですが語り手、役者、観客それぞれがいろいろなものを得ることができます。
  私がプレイバック・シアターに魅力を感じることは、皆でつくりだす劇を通してお互いがお互いを支え合い、またストーリーの分かち合いを通して、その場で共に存在しながら参加者が自分自身の存在を確認できることです。語り手は語り手として、役者は役者として、そして観客は観客として、自分がやりたい役割のなかで、自分を発見していきます。
私は「自分の存在」「人の存在」そして「今ここに共に存在」している実感は、どのような社会であれ私たちがいきいきとして生きていくためになくてはならないものだと思います。そして、プレイバック・シアターを通して、このようなことを参加者みんなと一緒に生み出していきたいと願っています。それは、プレイバック・シアターの創始者、ジョナサン・フォックスが描いた「コミュニティーのなかで、人と人のつながりを育む」ということだと実感しています。
       
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